神殿の前にお供えされた数多くの野菜を前に浄めの神事が執り行われていました。先日、あま市萱津神社へと出かけ日本唯一の漬物神事「香の物祭」を見物してきました。
8月に入りあまり芳しくない天候の日が続いています。この日もドンヨリとした空模様、陽射しはありませんが湿気が多く、とても蒸し暑いです。五条川沿いにある萱津神社は、古くから漬物を祀る神社として有名です。
萱津神社「萱津会館」、会館内には漬物に関する資料などが展示されています。萱津神社で毎年執り行われます「香の物祭」の神事についての紹介です。昔、村人たちが瓶の中に初生りのウリやナス、ダイコンなどの野菜を塩とともに一緒に入れて神前に供えたところ、偶然にほどよい塩梅の漬物となり、雨露にあたっても変わらない不思議なその味を「神様からの賜りもの」として珍重し、遠近を問わずいただきに集まり万病を治すお守りとしてこれが漬物の元祖となって広まったことに始まるそうです。
漬物 の神様「鹿屋野比売神(カヤヌヒメノカミ)」の像です。鹿屋野比売神を奉祀する萱津神社、神話では日本武尊(ヤマトタケルノミコト)が東征の際、村人たちが長旅をお慰めするためにこの漬物を進上したところ、日本武尊は「藪に香の物」と感嘆され、それが「香の物神事」にとなったと伝承されています。
午後2時から拝殿内で神事が既に始まっていました。拝殿奥にはには日本武尊と尾張宮簀姫に縁のある「連理の榊」にも関係ある本殿があります。
神事が行われる神社香の物殿には、本日漬け込まれる野菜 達が山盛りに供えられていましたよ。
手前からカリモリ、ナス、ハクサイ、ダイコンと虫予防にタデが供えられていました。 手前のカリモリは、愛知の伝統野菜に選定されている、この地方独特の漬物用瓜ですから馴染のない方も多いようですね。
神殿前には石造の漬物樽が安置されています。上部野菜の形をした石造のものは、今年に漬物組合から奉納されたとのことが新聞で紹介されています。
神殿内には、本日の漬け込み神事で使用される瓶が用意されていました。
神事が始まる時間近くになってくると香の物殿周辺にも多くの人が集まってきました。地元小学生の地域学習なのでしょうか?皆さん、供え物を取り囲み、熱心に神社役員の方に質問されていましたよ。
やっぱりこの漬物モニュメントには興味津々だったようです。目をパチクリしながら役員さんに質問したり、モニュメントを取り囲み手で何度も触って歓声を上げていました。
拝殿での神事が終了し漬け込み神事が始まります。宮司さんや祭役員さん、そして参拝客が香の物殿へと集まりました。
日本武尊に縁のある尾張宮簀姫(オワリミヤズノヒメ)、それとも漬物の神様である鹿屋野比売神役の方でしょうか。。とても綺麗な方々ですね。。
神事は、萱津神社神官様の祝詞奏上から始まります。
続いて奉納された野菜を浄めます。
その後、熱田神宮の神官様の祝詞が続きます。日本武尊が熱田神宮に祀られているということで、縁のある熱田神宮へもこの「香の物」をお供え する事になったことに由来するとのことです。この神事自体が熱田神宮へ献上する漬物を作るための漬け込みの神事ですからね。
祝詞終了後、漬け込み神事に入ります。宮司様、漬物業者、村役の皆さんから供え物の野菜を持ち、女性の方が持つ塩を一握り持ち、香の物殿内の瓶に漬けこんでいきました。水郷も続いて漬け込み行事に参加しました。今年は大根を持つことにしましたよ。
塩を一握り持ち、写真のように野菜を揃えて漬け込みました。MY畑の豊作と美味しい漬け物が今年も楽しめるようにとお詣りしました。
漬け込みを終わって香の物殿前に戻ります。写真のように見物されている一般の方もこの漬け込み神事にドンドン参加され凄い行列となりました。全員参加というのがこのお祭の有難いところです。その後、氏子さんたちが塩加減を見ながら仕上げを行い、漬け物石を瓶に乗せて神事は完了するようです。。この後2年程ねかせてほどよい漬物が出来上がるとのことですよ。この神事は現在、あま市の無形民俗文化財に指定されています。
神事はこれですべて終了、祭役員の方々は香の物殿の前で記念撮影をされていました。みなさん神事が無事終了されほっとされているようでした。
約2時間ほどのお祭で質素ですが神秘的なお祭でした。世界に誇る無形文化遺産「和食」を支える漬物文化、とても大事なものと再認識です。写真は、五条川堤防から見える高層ビル群はJR名古屋駅周辺のものです。都心からわずかな距離のところに、このような神秘的な行事が伝承されているのも、また魅力の一つに挙げられますね。。
水郷楽人の塵芥録HP版(クリックするとHPにジャンプします)
こちらは水郷楽人の塵芥録HP版です。修正作業はほぼ完了し、加筆及び追加作業を行っています。まだ工事中の部分がありますが、よろしければご覧くださいね。